世界のクラブシーンを考察する
イギリスのDJ MAG誌が毎年発表しているのが世界クラブランキング。2015年版のまとめと共に、世界でどの地域がクラブ遊び的に熱いのか考察してみました。ちょっと真面目なエントリーですw
2015年ランキング
まずは、2015年版の世界クラブトップ10を見て見ましょう。
ランキング |
クラブ名 |
国 |
---|---|---|
1位 |
Green Valley | ブラジル |
2位 |
Space Ibiza | スペイン |
3位 |
HAKKASAN | アメリカ |
4位 |
Pacha Ibiza | スペイン |
5位 |
Amnesia | スペイン |
6位 |
Octagon | 韓国 |
7位 |
Zouk Singapore | シンガポール |
8位 |
BCM | スペイン |
9位 |
Ushuaia | スペイン |
10位 |
Sirena | ブラジル |
フルランキングが見たい方はこちらにpdfをまとめました。
韓国のオクタゴンやシンガポールのズークがトップ10にランクインしており、アジア陣の躍進が著しいです。また、スペインが多くランクインしているのは、そうイビサがあるからですね。Space、Pacha、Amnesia、Ushuaiaがイビサのクラブです。BCMはイビサの隣の島、マヨルカ島のクラブです。
さて、イビサやブラジルのクラブシーンが熱い、ぐらいのことは分かりましたが、世界的に見てどこの地域のクラブシーンが熱いのでしょうか?
世界的に見てクラブが熱い地域は?
世界のクラブシーンを分析するのにあたり、1位から100位のクラブにスコアを与えました。
1位は100点、2位は99点、…100位は1点と言った感じです。
世界の地域別に人口、TOP100に入ったクラブの数、スコア、スコアを人口で割ったものを表にしてみました。
単純に見ると、ヨーロッパのスコアが2位の北米の3倍近くになっています。
次に、横軸に人口数、縦軸にスコアを取ったグラフを示します。ヨーロッパ地域は人口が少ないのにもかかわらず、クラブが熱い地域である事が分かると思います。一方、日本も所属するアジアですが、人口が多い割にクラブスコアは低くなっています。インドや中国も入っているので、アジアという括りは大きすぎるかも知れませんが、地域別に見るとこのような状況になっています。
世界的に見てクラブが熱い国は?
さて、ヨーロッパのクラブシーンが熱いことは分かりました。次に国別に見たときにどこの国のクラブシーンが一番熱いのでしょうか?
先の表と同様に、世界の国別に人口、TOP100に入ったクラブの数、スコア、スコアを人口で割ったものを表にしてみました。
いくつか書き出してみると、
- 1位 … アメリカ
- 2位 … イギリス
- 3位 … スペイン
- 4位 … ブラジル
- 5位 … ドイツ
となっています。ちなみに日本からは渋谷のWombが48位にただ一つランクインしています。
単純な数ではなくクオリティーを考慮に入れ、スコアで比較すると、
- 1位 … アメリカ
- 2位 … スペイン
- 3位 … ブラジル
- 4位 … イギリス
- 5位 … イタリア
となっています。こっちの方がしっくり来る感じです。1位のアメリカはハウスミュージック発祥の地であり、ニューヨークやラスベガスなどクラブシーンが熱い街を持っています。2位のスペインにはイビサがありますね。3位のブラジルは世界No.1クラブのGreen Valleyを輩出している国です。
実際の国別のクラブシーンの総合的な実力はこうしてみるのが一番しっくり来るでしょう。
最後に、スコアをその国の人口で割ってみました。これによって面白い事実が浮かびます。
- 1位 … キプロス
- 2位 … クロアチア
- 3位 … シンガポール
- 4位 … パナマ
- 5位 … スペイン
先のランキングではランクインしなかった国が入っており、大分様子が違います。
1位のキプロスは29位にGuana Beach Bar、84位にCastle Clubをランクインさせています。キプロスはそもそも人口が86万人しか居ない国です。地中海のトルコ寄りの当たりに浮かぶ小島の国なので、リゾート地としての側面を持っています。
2位のクロアチアですが、20位のPapaya、37位のNoa Beach Club、53位のAQUARIUS、86位のRevelinをランクインさせています。そして、Papaya、Noa Beach Club、AQUARIUSはPagという人口8千人あまりの小島に集中しています。日本人の方には馴染みのないPag (Island)と言うところですが、Zrce Beachというビーチにクラブがありナイトライフのレベルが高い場所なのです。
Pagの雰囲気の分かる動画を貼っておきます↓
3位のシンガポールはZoukをランクインさせていますね。シンガポールはカジノや観光など戦略的に考えて行動している国家なので、クラブも観光戦略の一環として捉えているのかも知れません。いまや、シンガポールは一人当たりGDPで日本の二倍近くある国家です。戦略のある国家はクラブシーンも強いと言うことです。
シンガポールの一人当たりGDPの推移です。日本が2000年当たりで頭打ちしているのに比べ、シンガポールは着実に成長していることが分かります。これからもシンガポールの躍進が続く限り、熱いナイトシーンは無くならないでしょう。
世界のクラブのトレンドは?
いかかでしたか?地域別、国別にクラブシーンを評価してみました。これによって分かる一つの世界のクラブシーンのトレンドは、ビーチ+リゾートというものです。
もちろん都市部のクラブも多くランクインしているのは事実なのですが、クロアチアのPagなど、ビーチに併設されるクラブというのが世界的に人気を得ていることが分かります。イビサでも、近年行って感じるのはビーチにあるクラブ、Ushuaiaの勢いです。
イビサにしてもクロアチアにしても、共通するのはリゾート地で世界中から観光客を集めていると言う点です。リゾート地として発展し、観光客が集まる→観光客向けのクラブシーンが発展する→クラブ目当ての観光客が集まるという良い循環を作れているのが、イビサやPagと言えるでしょう。
日本がクラブ戦略で取る戦略は?
残念ながら、日本のクラブシーンの実力は世界的に見ても(アジアの中でも)低いものです。この状況を変えるのにはどうしたら良いでしょうか?
必要なのは明確な戦略です。世界ではクラブを興業と捉え、重要な観光資源として活用しています。
世界では事業者もホテルチェーンなどにより運営されており、一流ホテルの中にクラブが存在することもしばしばです。例えばイビサのPachaやUshuaiaなどはホテルチェーンでホテル事業者がクラブを運営しています。また、シンガポールのマリーナベイサンズの中にはクラブが複数入っています。ソウルのオクタゴンはホテルの地下にあります。
一方、日本では飲食店が運営していることが多いです。風営法の兼ね合いから、クラブの深夜営業は認められていなかったので、飲食店として営業せざるを得ない状況があるためでしょう。諸外国でも飲食店、バー、クラブの相性は良く、飲食事業者がクラブを運営するケースは多いですが、世界的なクラブは多くがクラブ専業として営業しています。
東京の国際競争力を加速させる
世界的なクラブを生み出すのに外国人観光客の力は必須です。彼らの口コミがSNS等で拡散し、さらなる客を呼び込みます。日本に世界的なクラブを作るとしたらどうしたら良いでしょうか?
イビサのように日本のクラブをビーチクラブにするのは得策ではないでしょう。日本の気候では営業日が限られますし、そもそもどこに作るかという問題もあります。ホテルニューオータニがナイトプールをやっていますが、あれも夏季限定です。
私はやはりクラブを興業として捉え、都市型のクラブを東京都心に作る事が必要だと思います。Wombも良い線行っているのですが、例えば想像してみて下さい、六本木のリッツカールトンの52階にクラブがあったら…。52階の角部屋のスイートルームでは目の前に東京タワーが見えます。ロアビルからの眺めとはレベルが違います。
東京と聞いて外国人が思うのはHistory、Foodと言った文化面に加え、Urban、Developedといった都会のイメージです。パークハイアット東京のニューヨークバーは東京の夜景目当ての外国人でごった返しています。国際線のパイロットに聞くと、世界一夜景の綺麗な街は東京だそうです。
東京の持つポテンシャルを最大限生かしたクラブが一つできることで、東京のナイトクラブシーンがもっと素晴らしいものになるのではないでしょうか。
誰か私の意見を参考に作って下さいw
ちなみに今回の分析に使ったエクセルファイルです。国別に見やすくなっていたりするので、よろしかったら使ってみて下さい。
→DJ_MAG.xlsx